東京高等裁判所 平成元年(う)75号 判決 1989年4月13日
主文
原判決を破棄する。
本件を横浜地方裁判所に差し戻す。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人河本仁之が提出した控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これを引用する。
所論は、量刑不当の主張であるが、まず職権をもって調査すると、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反があるので、所論に対する判断をするまでもなく、破棄を免れない。
すなわち、横浜地方裁判所小田原支部裁判所書記官Cの署名押印のある原審第二回公判調書(手続)は原判決の判決宣告調書であるところ、同調書には公判を担当した裁判官として「D」と記載されているのに、同調書欄外の裁判官(長)認印欄には、裁判官Eが担当した第一回公判の公判調書欄外の裁判官(長)認印欄及び原判決書末尾の裁判官Eの署名下に押されているのと同一と認められる「E」と刻んだ印が押されていて、裁判官Dの認印は存在しない。そうすると、右の第二回公判期日における判決宣告は、いずれの裁判官によってなされたものか、換言すると、判決の宣告が適法になされたものか否かを知ることができないことになり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反に当たるものといわなければならない。
そこで、刑訴法三九七条一項、三七九条により原判決を破棄し、同法四〇〇条本文に従って、本件を原裁判所である横浜地方裁判所に差し戻すこととして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官坂本武志 裁判官田村承三 裁判官泉山禎治)